名古屋発・16もの私鉄が乗り放題のきっぷで静岡を乗り歩く

静岡県

2023.01.20

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名古屋発・16もの私鉄が乗り放題のきっぷで静岡を乗り歩く

三重県在住。愛読書は時刻表。暇さえあればリュックひとつで旅に出かける私は、こよなく愛する鉄道を使い、温泉や絶景巡りをしています。鉄道旅を通して見つけた魅力をお伝えします。今回は名古屋からフリーきっぷで東に向かい、静岡の私鉄を乗り歩いてきました。

目次

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雪の名古屋から東海の南国、静岡県へ

遠州鉄道&天竜浜名湖鉄道に乗ってかもめの楽園へ

古い鉄道遺産の残る天竜二俣駅

工場夜景が美しい岳南(がくなん)電車

新雪の富士を仰ぎながら中伊豆を走る駿豆(すんず)線

伊豆長岡温泉「ダブル世界遺産」の絶景を楽しめるスポットへ

旅の締めはやはり温泉! 修善寺温泉でひとっ風呂

雪の名古屋から東海の南国、静岡県へ

今年のクリスマスイブは寒波が到来して西日本でも雪が積もりましたね。

名古屋駅も雪化粧しておりまるで北国の駅にいるかのような光景です。

そんな寒いクリスマスイブはイヤ、ということでわたしはあるフリーきっぷを使って雪が降らない静岡県に逃げることにしました。ちなみに静岡県は平野部では沖縄県、宮崎県に次いで降雪日が少ない県です。

今回使ったきっぷは「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」です。「乗り鉄」と銘打つ鉄道マニアを意識して作られた企画乗車券で、JR東海の全線(上のきっぷの実線部分)と、周辺の16もの私鉄(点線部分)に乗車することが可能です。特急券を買えば特急にも乗れますし、熱海から米原の区間なら新幹線にも4回まで乗車することができます。土日休日の連続する2日間利用可能です。名古屋からなら私鉄を使わなくても単に名古屋~三島間の往復で元が取れてしまいます。JR東海エリアの各駅で購入することが可能です。

遠州鉄道&天竜浜名湖鉄道に乗ってかもめの楽園へ

雪化粧した名古屋駅を出発して在来線で約1時間40分。静岡県の浜松駅に到着しました。ここでいったん下車してフリーきっぷで乗れる遠州鉄道に乗り換えます。

遠鉄百貨店を抜けて新浜松駅へ。

遠鉄百貨店を抜けて新浜松駅へ。

遠州鉄道はJR浜松駅すぐ近くの新浜松駅から天竜区の西鹿島(にしかじま)駅を結ぶ私鉄。政令指定都市・浜松の住宅の密集する地域を走る生活に欠かせない路線です。

遠州鉄道はこのような赤い電車が特徴で市民には「赤電」の名で親しまれています。浜松の街並みを眺めながら33分で終点の西鹿島駅に到着。さすが雪のない国、静岡。すっかりいい天気です。ここは天竜浜名湖鉄道との乗り換え駅です。

天竜浜名湖鉄道の列車がやってきました。この列車で少し西に戻っておもしろい駅に降りたいと思います。

JRの新所原駅から掛川駅までの間を浜名湖の北岸を迂回して走るので、ところどころで穏やかな湖の景色を眺めることができます。

列車は浜名湖佐久米(はまなこさくめ)駅に到着しました。その名の通り浜名湖に面した駅です。一見何の変哲もない駅のホームに入ると目を疑うような光景を見ることに……!

!!!

!!!

ホームに無数のゆりかもめ! 明らかに乗客よりも鳥の数の方が多いです。今回はかもめのためにエサを持ってきました。安いスティックパン。駅に併設されている喫茶店でもパンの耳を餌用に売っています。それを見せるだけでかもめが寄ってくるわ寄ってくるわ!

くれくれ! パンくれ!

くれよ、俺にもくれ!

以前息子とここに来た時の写真。頭に平気で乗られます。

スティックパンをちぎって投げるとそれをすかさずダイビングキャッチ! 餌をくれそうな人の周りを飛び回るのでちょっと恐怖を感じますが、楽しいです! ゆりかもめは渡り鳥。越冬するために日本に来るので冬にしかここにいません。また、特に寒い日は本来の餌である小魚が取れないことから集まるかもめが多いそうです。寒い日こそゆりかもめと戯れることができるチャンスですよ!

古い鉄道遺産の残る天竜二俣駅

右を見ても「だいさんむら」、左を見ても「だいさんむら」。

右を見ても「だいさんむら」、左を見ても「だいさんむら」。

さて、今度は東に向かう列車に乗って天竜浜名湖鉄道の中心駅、天竜二俣駅にやってきました。でも駅名表記は……「だいさんむら」?

これは『シン・エヴァンゲリオン』に登場した駅がこの駅をモデルにしているため、PRを兼ねて一時的に「第3村」と改称しています。地元の方はちょっと戸惑っているようです……。

天竜二俣駅は、昭和15年に開業した当時の建物を使用しており登録有形文化財に指定されています。ほかにも昔の鉄道の姿を知ることができる数々の文化財があり、ツアーに参加すれば見学できます。わたしもこのツアーに参加してみました。

蒸気機関車が走っていたころに使っていた給水塔。

蒸気機関車の煤で汚れた運転士たちが業務を終えたあと利用していた浴場跡。今はヘッドマーク保管庫になっています。

かつての駅名標やタブレットなどを保管する鉄道歴史館。貴重な鉄道遺産が数多く保管されています。

見学ツアーのハイライトは何といってもこの転車台の回転見学。以前は蒸気機関車の方向転換で使われましたが今は多くの鉄道で姿を消しています。ここでは本線と車庫に入れる線路の間を橋渡しするために今も現役。ぐるぐると転車台に乗った電車を回転して見せてくれました。

◆ガイドと歩いていく! 転車台&鉄道歴史館見学ツアー
住所:静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵
電話:053-925-2276
見学時間:月~金曜 13:50、土・日祝日 10:50、13:50 ※予約不要
所要時間:40分ほど
料金:大人 600円、子供 300円

工場夜景が美しい岳南(がくなん)電車

天竜二俣駅から列車に乗って掛川駅からJRに乗り継ぎます。静岡県内のJRは各駅停車しかないためのんびりと約1時間半ほど電車に揺られて富士市の吉原駅にやってきました。冬至を過ぎたばかりなのでまだ17時を回ったところなのにすっかり暗くなってしまっています。

岳南電車はJR吉原駅から岳南江尾(がくなんえのお)駅まで9.2kmを走る私鉄です。富士市内で完結するミニ私鉄ですが、近年この私鉄の知名度を急激にアップさせたのが工場夜景ブーム。

富士市は全国的にも有名な製紙の街。特にこの吉原地区には工場が多く存在し、岳南電車は工場のすぐ近くを走ります。

わたしも比奈駅と岳南原田駅で下車して不慣れな夜景撮影を試みてみました。

夜、人影のない岳南原田駅。寂しいですが懐かしさを感じさせます。

岳南電車のホームの多くにアーチ状の屋根がかかっています。映画のワンシーンに出てきそう。

岳南原田駅から工場夜景を望みます。

工場群を抜けて列車がやってきました。なんだか幻想的な景色です。

帰りの電車は「夜景電車」でした。2両編成のうち1両は真っ暗。沿線の工場夜景をガラスに反射しないで夜景を堪能できるイベント列車で存分に夜景を楽しんでみるのもいいと思います。

新雪の富士を仰ぎながら中伊豆を走る駿豆(すんず)線

夜景を撮影したあとは沼津駅前のホテルに宿泊して朝を迎えました。12月25日、この日もいい天気です。ひと駅先の三島駅から旅をスタートします。

三島駅から温泉で有名な修善寺まで走るのが伊豆箱根鉄道駿豆線。東京からは特急「踊り子」号も乗り入れていて沿線にも多くの観光スポットが点在します。

お正月の準備も万端の三嶋大社。

寒い日の朝は川から蒸気が立ち上ります。え? 温泉なの? と誤解してしまいそうです。

三島の地名のもととなった伊豆の守り神「三嶋大社」は駅から徒歩15分ほどで到着します。ここに至るまでの間には富士や箱根の湧き水も見られ、水と親しみながらの散歩を楽しめます。

◆三嶋大社
住所:静岡県三島市大宮町2-1-5
電話:055-975-0172

伊豆長岡温泉「ダブル世界遺産」の絶景を楽しめるスポットへ

三島駅からまた電車に乗り20分強で伊豆の国市の中心駅、伊豆長岡に到着します。約20分ほど歩くと、2015年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつとして世界遺産に登録された「韮山反射炉」を見ることができます。江戸末期、海洋防衛の必要性を感じた当時の代官の旗振りによってつくられました。

今は炉しかありませんが、当時はこの周りには大砲を作る工場が存在し、 溶かされた鉄を型に流して冷やしていました。

江戸末期のわずか7年間の稼働ですが、 実際に稼働した反射炉で還俗するものは世界的にも珍しく世界遺産となりました。

近くの茶畑を登ると展望台があって、韮山反射炉と富士山の「ダブル世界遺産」を望むことができます。なかなか見られない贅沢な景色です。

◆韮山反射炉
住所:静岡県伊豆の国市中268
電話:055-949-3450
観覧時間:10月~2月 9:00~16:30、3月~9月 9:00~17:00
料金:一般(高校生以上)500円、生徒・児童 50円

もっと富士の絶景が見たい! という方はこちらのスポットがおすすめ

伊豆長岡駅からバスで約10分ほどのところにある「伊豆パノラマパーク」。ロープウェイに乗って約7分、葛城山の頂上「碧(あお)テラス」から見る駿河湾の向こうの富士の絶景。なんだか浮世絵に出てきそうな景色です。

人工の池に反射する逆さ富士が撮れるスポットですが、お客さんも多いのでなかなかこれ! というのは撮るの難しいですね。

富士を見渡せる足湯(100円)もあります。

テラス席でお茶を飲みながら存分に富士山を楽しみましょう!

◆伊豆パノラマパーク
住所:伊豆の国市長岡260-1
電話:055-948-1525
営業時間:9:00~17:30(上り最終17:00)、冬期(10/16~2/15)は30分早く終了
料金:大人(中学生以上)往復2500円 片道1800円、小人(小学生)往復1,400円 片道1,000円、幼児(3才以上)往復900円 片道600円

旅の締めはやはり温泉! 修善寺温泉でひとっ風呂

バスで伊豆長岡駅に戻りました。再び駿豆線で南を目指します。

約15分ほどで駿豆線の終着駅である修善寺駅に到着します。そこからバスに乗って約10分ほど行ったところに修善寺温泉があります。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で二人電車に乗って「社員旅行」に来ましたね。

歴史上の事件の舞台になった修禅寺。

歴史上の事件の舞台になった修禅寺。

修善寺の中心、地名のもとになったのが修禅寺。昨年大河ドラマで脚光を浴びた北條家の本拠地である伊豆は至る所に史蹟が残りますが、ここは2代将軍頼家が幽閉され暗殺された場としても有名です。

弘法大師が霊泉を湧かせたとされる独鈷(とっこ)の湯。今は見学のみですが川沿いに湧く温泉は修善寺温泉のシンボルです。

桂川沿に整備された「竹林の小径」。修善寺の四季を写真で紹介する「しゅぜんじ回廊」ギャラリーもあり散歩を楽しむことができます。

右の仰空楼からは修善寺温泉の景色を一望できます。

右の仰空楼からは修善寺温泉の景色を一望できます。

公共浴場「筥湯(はこゆ)」で温まって今回の旅を締めたいと思います。浴槽は1つで石鹸などの常備もない簡単な造りの温泉で、地元の方も多く訪れていました。

◆筥湯
住所:伊豆市修善寺924-1
電話:0558-72-5282
営業時間:12:00~21:00(最終受付 20:30)
料金:350円(小学生未満無料)、旅館組合加盟旅館宿泊者150円※旅館にて割引入浴券を購入
アクセス:修善寺駅よりバスで修善寺温泉行き「修善寺温泉」下車、徒歩約3分

帰りは特急「踊り子」号で三島まで戻り、三島から新幹線で帰ります。東京から伊東、下田に向かうイメージの強い「踊り子」ですが、一部はここ修善寺にも乗り入れています。今回私は駿豆線内しか乗らないので座席を指定されない200円の「座席未指定券」で乗車します。席の上のランプが赤色の空いている席なら着席自由です。三島から先、JR線まで乗るのであれば座席が指定されます。

三島駅に到着するころには日が傾いていました。今回は16私鉄のうち4社の路線に乗車しましたがどこもそれぞれ特徴があって乗って楽しい路線ばかりでした。

豊橋市の路面電車もこのきっぷで乗車できます。

大都名古屋のローカル線、朝日の美しい城北線も!

「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」はほかにも東海地方の多くの私鉄に乗車することができます。みなさんもこのきっぷを使ってローカル私鉄の魅力を楽しんできてみてはいかがでしょうか。

◆JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ
発売条件:土休日の連続する2日間に限る
利用期間:通年(時期によっては販売していない場合もあります)
有効期限:2日間
料金:おとな 8,620円、こども 4,040円
※詳しくは公式ホームページをご確認ください。

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#鉄道旅 #旅色LIKES #電車 #切符 #静岡県 #名古屋

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鉄道旅 なお

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なお

とにかく旅好きで暇さえあればリュックひとつでどこかに出かけています。鉄道をこよなく愛し、時刻表はわたしの愛読書。温泉も大好きなので鉄道を使って温泉巡りする、そんな記事が多いかもしれません。最近は絶景めぐりも旅のポイントにしています。みなさんオススメの絶景情報求む!

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