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ジュノハート誕生&栽培・流通ストーリー

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青森県オリジナルのさくらんぼ「ジュノハート」。その旬は短い。3週間ほどしか味わうことができない希少な果実は、生産者さんによると、色や形、食感、甘みなど全てにおいて文句のつけようがないほど優秀なのだそう。ジュノハートはどのようなさくらんぼなのか、誕生までの経緯や栽培についての苦悩や工夫、消費者へ届ける思いなどをインタビューしました。

写真/小野昭仁 文/松澤都呼

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生みの親に聞く 開発・育成ストーリー

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「開発・育成ストーリー」

さくらんぼ、ぶどうといった果樹の栽培技術や品種改良、病害虫の対策などを研究しているりんご研究所県南果樹部。「研究員一人ひとりが各々の研究を行っているので、開発も実際には一人の研究員が主に担当しました。当時の主力品種は佐藤錦でしたが、収穫時期に労力が集中するため、別のタイミングで収穫できる青森県独自の大玉品種が求められていたことが開発のきっかけです」と内藤さんは言います。そして平成8年に新品種開発の事業計画を立て、平成9年に交配を開始。平成10年に紅秀峰とサミットを交配した中の35個の種子が発芽に成功し、そのうちのひとつが後のジュノハートとなりますが、その道のりは長かったようです。

「交配を始めて2年目で誕生していると考えると、運が良いとも思いますが、その後平成20年までいろんな組み合わせを試しては種を採って育てて、実を観察して試食して、と……地道な作業が続いていました。最終的にはハート型のフォルムや大きさ、高い糖度、パリッとした果肉の食感の卓越した味わいが決め手に。県職員やさくらんぼ農家などたくさんの人がジュノハートの味や見た目に納得し、新品種に決定したそうです。

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生みの親に聞く 育てる思い

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「育てる思い」

青森県で唯一さくらんぼ栽培に温室ハウスを用いる留長果樹園。露地栽培と、収穫時期をずらせる利点があるものの、ハウス栽培はマニュアルもなく、果実を実らせることも一苦労だったようです。同じ室内でも、朝陽が差し込む場所だけ成長が早く、ハウスの形状や風通しによって成長スピードが変わってくることから、留目さんは温度調整が成功の鍵であることに気が付きました。果樹を栽培してきた経験を踏まえて、「次は何度下げてみよう」など感覚で調整するしかないそうで、「その難しさこそが面白さで、ならなかった実をならせたときの喜びは、作物を作っている人にしか味わえない喜び」なんだそう。「ハウスの収穫が終われば次は露地栽培! 楽しみだよ。いいものができるよ」とわくわくしていました。

留目さんはジュノハートの存在を、「言うごとなしのぼんずの頭(意味:文句のつけようがないかわいい息子の頭)」と例え、「持って生まれた形はかわいいハート型だし、艶があるし、味もいい。どこをとっても“文句のつけようが無いような子たち”」と言います。「消費者から直接感想を聞く機会は滅多にないですが、稀にECサイトで購入したお客様から、青森に行く予定があるので寄っていいですかと連絡を受け、対面することもあります。お客さんが口に運んでくださっておいしいと言ってくれる喜びは、苦労が報われる瞬間ですね」と笑顔で教えてくれました。

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生みの親に聞く 届ける思い

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「届ける思い」

八戸中央青果で果実を担当し、競り人を務める古里さん。実家はもともと農園でしたが、果樹は扱っていなかったそうです。入社して26年を迎えている現在でも週の大半は、生産者や農協を訪れ、情報収集をしているそう。現地に足を運び、知識を培うことが競りの場に生きる、と古里さんは話し、「技術では補えない天候の影響があるので、毎年毎年、量や品質などの出来具合が変わってきます」と、ジュノハートの生産の難しさを教えてくれました。

ジュノハートは真っ赤な実がさらに濃くなり、完全に熟した状態がおいしいようで「正直お店泣かせなくらい鮮度が命の果実です。初競りから3週間ほどしかシーズンがないので、貴重です」と古里さん。去年は初競りで1箱15粒入った約60箱がおよそ10分で落札されたのだとか。年々高まる期待にプレッシャーを感じながらも、知識を活かし、入念な準備を欠かさない古里さんや、市場から果物を購入する買受人(かいうけにん)、生産者の情熱がそのわずかな時間に集まっています。

県内随一のジュノハートの郷「南部町」はこんなところ

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