言わずと知れたごグルメの宝庫・沖縄。その独特の食文化は、琉球王朝時代からの長い歴史と、外国からの影響を大きく受ける中で生活に根付いていきました。やちむんも同じく、中国や南方諸国から陶磁器が輸入された16世紀ごろから技術が伝えられ、約600年もの歴史の中で沖縄の暮らしに馴染んだ民藝品です。大胆な装飾と厚みのあるぽってりとした形には、海外文化を受け入れるなかで育まれたおおらかさが表現されているよう。今回はそんな沖縄の歴史がぎゅっと詰まったうつわに定番お取り寄せグルメを組み合わせて、定食風に仕上げました。沖縄そばの一種である八重山そばは、つるんと食べたい夏の昼食にぴったり。具だくさんのおにぎりとさっぱりジュースとの相性を楽しんで。
写真/村上未知 文/旅色編集部
沖縄の“焼き物”を示す「やちむん」の中でも、釉薬によって鮮やかな模様が施されたものは上焼(じょうやち)と呼ばれ、私たちが南国らしい華やかさを感じるうつわのほとんどはこれにあたります。一方で、釉薬をかけずに素焼きしたものは荒焼(あらやち)と呼ばれ、土の風合いそのままの荒々しさが特徴です。17世紀、琉球王朝時代に各地に点在していた窯場が現在の那覇市壺屋に集められたことでやちむんが発展、その後よりよい環境を求めて陶芸家が読谷村に移り住み、現在も「やちむんの里」として知られています。
教えてくれたのはこの方
竹内万貴(うつわスタイリスト)
「一見手抜きに見えそうなメニューも、やちむんなら立派な定食に仕上がります」そう教えてくれたのは、うつわスタイリストの竹内万貴さん。雑誌やレシピ本、広告などで料理に合わせた器の提案や、スタイリングを行うほか、うつわを求めて地方の窯を訪ねることもあるほどの“うつわマニア”。
恩納村の森の中にひっそりと佇む窯で作られる、やちむんらしい存在感のあるうつわ。マカイとは「お碗」のことですが、うつわの底の高台(こうだい)が広く安定した形は沖縄独特のもの。内側に大胆に描かれた唐草模様は、沖縄そば、八重山そばはもちろん、素うどんなどシンプルなメニューも華やかに見せてくれます。
その名の通り、釉薬を指を使って掻くように描いたのびやかな印象のうつわ。派手さはありませんが、古きよき沖縄の民藝を感じさせてくれます。
沖縄の特色である再生ガラスでできたグラス。厚みがあり口当たりが優しいので、暑い夏にゴクゴク飲むのにぴったり。気兼ねない昼食には軽やかな小サイズが似合います。
沖縄各地に窯場がありますが、お気に入りを見つけるなら「壺屋やちむん通り(那覇市壺屋)」や、「やちむんの里(読谷村)」のほか、沖縄各地で行われる陶器市に足を運んでみるのが効率的です。一般販売をしていない窯元も多いので、貴重なうつわはセレクトショップを活用して探すのもおすすめ。
日本各地から集めた民藝・生活道具のセレクトショップ。商品だけでなく、民藝の歴史や、店主の奥村忍さんが現地に足を運んで取材した窯場や職人の様子が丁寧に紹介されている。
HP/http://www.mingei-okumura.com/
※陶器は色や形、風合いが異なるほか、必ずしも同じ作品があるとは限らない点、ご注意ください
柄物どうしを組み合わせるのは難しいとされがちですが、色味と技法で強弱をつければ、喧嘩することはありません。メインのマカイにインパクトがあるので、平皿は落ち着いた色味のものを。グラスも小ぶりにすることでバランスが取れます。
麺をゆで、スープと具材(細切りかまぼこと豚肉)をトッピングするだけで簡単にできる八重山そば。うつわに力があるので、彩りの小ネギなどはあえて使わずに仕上げました。素うどんなどでも応用できる引き算です。