高級コンデジ「RICOH GRⅢ&Ⅲx」で広げる旅写真の可能性
こんにちは! 写真家のこばやしかをるです。春の始まり。どんよりとした曇り空の中、3月26日に開催された撮影会。そして、テーマ「あなたが春を感じるシーン」でフォトレビューにもご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
開催時期はちょうど桜が咲いたばかりで、蔓延防止対策も解除され、皆さんとても熱心に、楽しそうに撮影されていた様子が印象に残っています。また、フォトレビュー会に投稿された写真の中にもたくさんの桜を拝見することができました。日本人がこよなく愛する花の代表が桜なんだと、改めて感じたひと時です。
一方で、レビュー会のテーマに沿うと「春って桜だけ?」と思うことが多々ありました。そこで、旅写真を撮る上でもテーマの捉え方を今一度考えてみませんか。
Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材:RICOH GRⅢ,Ⅲx
目次
ストーリーが感じられる写真とは
レビュー会のテーマ「あなたが春を感じるシーン」に対しての皆さんのアンサーは、春=桜が大多数でした。これがいわゆる“スマホ写真”、“SNS映え”から派生した現象なのかもしれません。春の訪れを心待ちにしていたこともあり、桜に心を奪われてしまう気持ちも分かるのですが、「春を感じるシーン」は他にもたくさんあります。食・ファッション・イベント事、そして青春も、恋心も、出会いも。私自身は、新たなものに心が触発されて動き出すような瞬間や、ワクワクして心が弾むようなイメージが春の様子だと感じています。英語の「Spring」がまさにその意味を指していると言えるでしょう。
春という言葉をダイレクトに受け止めるのではなく、様々な角度から捉えることや、自分なりに感じ得たこと。そして具体的な提案。少なくとも3つの要素を表現として持つことでストーリーが生まれます。写真の中に“物語が在るか”がキーポイントなのです。
例えば、撮影会で訪れた浅草・隅田川は滝廉太郎作曲の代表的な「花」で「春のうららの隅田川~」と唄われてきた場所です。その「うらら(麗)」という言葉・文字がどんな意味なのかを探るだけでも「春」のヒントが得られ、テーマが生まれるのではないでしょうか。
そのために撮影時には画面の中で具体的にピントを合わせる位置(見せたいもの)を決めることや、背景に何を持ってくるのか(メインの被写体を引き立てる)、どんな明るさで撮りたいのかを考える。それこそが、写真表現=ストーリーにつながっていきます。
伝えたいことを明確にする
ストーリーと言うと難しいかもしれませんが、カメラの機能やレンズの特徴を知り、使って、どんな写真を撮りたいかを繋げて考えてみましょう。
物を見せたいのか、お店の中や雰囲気を伝えたいのか。それともただの記録なのか。これを決めるだけでも、伝えたい内容に大きな違いが出ます。また、伝えたいことのために使う機能がどれなのか、という逆算的な考え方も有効です。
なぜ高級コンデジが旅写真に向いているのか
撮影会でメーカーさんよりお借し出しいただいたカメラは、一般的に“高級コンデジ”といわれている「RICOH GRⅢ&Ⅲx」。数年前までは一眼レフのサブカメラという位置づけで扱われてきたカメラですが、今では写真を見せるメディアが多様化したことや、カメラ自体も高機能・高画質となったため、メインカメラとして使われていることも少なくありません。
私自身、日常でも、海外旅行でも相棒として常にRICOH GRⅢ&Ⅲxを持ち歩いています。普段使いのバッグで納まるほどコンパクトなので、荷物にならないところもポイント。そしてセンサーサイズがスマホよりも断然大きいため、写真を大きなサイズにプリントしたときに作品として満足度の高い画質が叶います。
スマホカメラは年々スペックが上がっているため、写真撮影は「スマホがあれば十分」と思う方もいたはず。しかし、スマホと比べて格段に高機能・高画質なのは使ってみると分かります。
スマホ全盛期にあえてカメラを所有する。それは、レンズを通して「私自身が体験した時間」を見て、写真を撮ることに集中したことを表します。カメラのみの単機能だからこそ味わえる、ある種の緊張感は旅の記憶に紐づくかもしれません。
カメラの機能を使い分ける
GRⅢ&Ⅲxのマクロモードでは、被写体に近づき一部をクローズアップして伝えることができます。素材を見せたり、背景をぼかしたりすることで、見せたい部分が明確になります。
GRⅢ&Ⅲxは単焦点レンズなので画面全体を広く見せたい時には自分の立ち位置を考えながら一歩、二歩引いて全景を客観的に捉えるようにしています。ズームしないレンズですが、クロップというデジタルズーム機能が備わっているので撮影画面の一部を切り取って具体的に見せることも可能です。“これ以上近づけない”という場所でも活躍します。
手ぶれ補正機能も抜群に効き、夜間帯も変化に富んだ撮影ができるのも嬉しいところ。また、色の設定に関するイメージコントロールはその雰囲気から感じられるストーリー性を生み出します。
これらのように、シーンや被写体に合わせて機能を使い分けることで表現の幅が広がります。“カメラで撮影する”ということは、伝えたいことに対し、様々な機能面が補ってくれるので表現が可能になるのです。
スマホと同様に感じるかもしれませんが、仕上がりの結果にはやはり差があります。光学レンズでなければ味わえない撮影時の楽しさ、美しさを感じられるはずです。
おわりに
写真講評会、写真展、コンテストなど数々の写真を見る機会を頂きますが、何かを「伝えたい、届けたい」という思いと、旅記事を書くという目的があるなら、写真に力をつけて“思いが伝わる写真”を目指していくことは大切だと感じます。
「余計な文字情報ではなく、一枚で語ればいい」これは私自身も写真の師匠から教えていただいたことです。写真力のある一枚を添えるだけで、文章の意味合いも大きく変わりますし、伝えるべきことが明確に現れます。
“物語がそこに在るか”を常に頭の隅に置きながら、どの機能を使うのか考える。その繰り返しを続けていくことで、旅写真の可能性と表現は広がっていきます。“高級コンデジ”という、小さなカメラ1台で格段に変わる旅の世界と表現。皆さんもぜひ味わってください。