【川瀬良子の農業旅】“晩柑の王様”と呼ばれる「サワーポメロ」って? 鹿児島・いちき串木野市へ

鹿児島県

2023.03.20

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【川瀬良子の農業旅】“晩柑の王様”と呼ばれる「サワーポメロ」って? 鹿児島・いちき串木野市へ

こんにちは!農業旅・アンバサダーの川瀬良子です。今回は、鹿児島県内一のサワーポメロの産地、いちき串木野市へ農業旅に行ってきました。みなさん「サワーポメロ」って知っていますか?

目次

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鹿児島県いちき串木野市とは

旅のきっかけになった「サワーポメロ」とは?

かわいいが止まらない農園へ

熟成したサワーポメロを実食

漁業についても学ぶ~いちき串木野市名物「まぐろラーメン」~

まとめ

鹿児島県いちき串木野市とは

提供:いちき串木野市役所

提供:いちき串木野市役所

2005年10月11日 に串木野市と日置郡市来町(いちきちょう)が合併してできたまちです。薩摩半島の北西部に位置し、南九州自動車道を利用して鹿児島市街地から車で約30分、鹿児島空港から約70分で行くことができます。東シナ海を望む吹上浜(ふきあげはま)の海岸線と霊峰「冠岳(かんむりだけ)」の山に囲まれ自然豊か。またまぐろ・焼酎・ポンカンなど、豊かな「食のまち」でもあります。

旅のきっかけになった「サワーポメロ」とは?

先日、知人に「サワーポメロって知ってる? 」と聞かれ、サワー(sour)=酸っぱいなにか? としか想像できませんでした。

サワーポメロの断面。

サワーポメロの品種名は大橘(おおたちばな)。文旦(ぶんたん)の系統を受け継ぎ、夏みかんやグレープフルーツとは親戚同士、といわれると想像がしやすいですよね。江戸時代に中国から日本に伝わりました。鹿児島県では昭和49年ごろから栽培が始まり昭和60年に公募によって「サワーポメロ」と言う名前がつき、地元の方は、ポメロ(=文旦)と呼んでいます。柑橘類大好きで、毎年秋~春にはいろんな種類を食べ比べるのが楽しみなのですが、まだまだ知らない柑橘が日本にはあったなんて……これは現地へ行って見てみたい! と、心がうずいたのが旅のきっかけです。

かわいいが止まらない農園へ

今年1月、全国的に寒波が来ていた日に鹿児島県へ。鹿児島空港からの道中も雪で高速道路が通行止めで、予定の3倍ほどの時間をかけていちき串木野市に着きました。翌日、畑に向かったのですが、農園まであと300メートルほどの山の雪道で車が動けなくなり、残りは歩いていくことに。ハプニングも振り返ると旅のいい思い出です。

西果樹園の西 美香さん。サワーポメロの栽培歴は27年。

西果樹園の西 美香さん。サワーポメロの栽培歴は27年。

山道を登っていくと、今回の目的地サワーポメロを栽培している「西果樹園」が見えてきました。緑色の葉っぱがたくさんついている木に、鮮やかな黄色でぽてっとま~るい大きな柑橘が。なんというかわいらしさ! 緑色の世界に、黄色いドット模様を付けたようなファンタジーな世界が広がっています。畑の広さは、全部で約3ヘクタール。約500本の中には、植え替えたばかりの小さな木から実をしっかりつけた40年ものまであります。

切っている手元。

さっそく、一緒に収穫させてもらいました。ハサミを使い、ヘタの上10センチぐらいの枝を残して切り離します。残った枝は、ヘタの真上でもう一度切ります。この枝が数ミリでも残っていると、収穫後、かごの中で他のサワーポメロの表面を傷つけてしまうそうです。右手でチョキン! と切って左手を大きく広げ、手のひらでサワーポメロをキャッチしてみると、実が詰まっている重量感がずっしりと伝わってきます。切った後のも葉がついていたり、2玉サクランボのようにくっついてきたり。何度も言っちゃいますが、ポメロって本当にかわいい~! 異例の雪の影響で、収穫が滞っていたようでお話をしながらも、西さんの収穫の手は止まりません。「でも、そのおかげで木にポメロがなっているところを川瀬さんに見てもらえたからいいのよ~」と大らかな西さん。

切った枝からも爽やかな香りが!

私はというと、切り口からも柑橘の爽やかな香りがすることに驚き、切る度に毎回鼻の前まで持ち上げて「ん~!」と香りを楽しむ始末。収穫のお手伝いになっていたのかな?(笑)

収穫作業は約1週間続き、1日約3トンを西さんご夫婦とパートのみなさんで行うそうです。大きさの平均は11.5センチ、重さ約400グラム。「一つひとつ大きいから指をしっかり広げないと掴めないので、手が筋肉痛になります」。これはサワーポメロの農家さんならではのご苦労ですね。「箱に詰めているときに形のきれいなポメロを見ると嬉しくなりますね。あ~よかった!」って。

収穫したてをみんなでいただきました!

収穫後、どうしても我慢できず「食べてみたいです! 」といったら、「本来は、2週間貯蔵して熟成させてから出荷するからまだおいしくないかも……それでもよかったら」と、食べさせて頂きました。スキッとしていてあっさり、酸味もあっておいしかったです。約2~3週間貯蔵することで熟成され、酸味が抜けて味がまろやかになるそう。知らなかった~。味の変化がとっても楽しみです。

熟成したサワーポメロを実食

約3週間後、西さんから貯蔵の様子の写真を送っていただきました。サワーポメロがどっさり入っているカゴが山積みになっています。大きさごとに選別してから、一つひとつすべてのポメロを磨くのだそう。この数ですよ~!? 私たちによりよいものを届けたい、という思いに感動しました!

購入したサワーポメロを自宅で食べたのですが、収穫直後と味が全然違いました! 酸味もありつつ甘みもあってさっぱりまろやか。柑橘を食べてまろやかと感じたのは初めてかもしれません。さらに、粒が大きくてぷりぷりっとしているところもおいしい~! 弾む食感にとても驚きました。

サワーポメロの剥き方。

サワーポメロの剥き方。

食べながら、西さんのことや農園の空気、いちき串木野市で出会ったみなさんを思い出し、農業旅をしてから農作物を食べると味わいが変わってくるな~と、改めて実感しました。西さん、お忙しい中ありがとうございました! 西さんのサワーポメロは、電話やFAX、InstagramのDMから購入できるそうです。

◆西果樹園
住所:鹿児島県いちき串木野市生福7223
電話:0996-32-1830 
FAX:0996-32-1836
Instagram:@west_24farm

漁業についても学ぶ~いちき串木野市名物「まぐろラーメン」~

西さんの農園をあとにし、お腹がすいてきたところで、「いちき串木野市名物の“まぐろラーメン”を食べに行きましょう。」といって頂いたのですが……まぐろラーメン? 初めて聞きました。ハテナだったサワーポメロがやっとわかったところなのに、またまたハテナがやってきました(笑)。

みその食堂で早速注文。運ばれてきたラーメンを見てびっくり! チャーシューのように麺の上にドーンとまぐろが乗っています。漬けまぐろなので、テーブルに置かれ、写真を撮っている数秒の間にスープからの熱がまぐろに伝わり、赤身の色がどんどんとまぐろグラデーションに。そしてスープはキラキラと透き通っていて、見た目にも華やかな美しいラーメンです。まぐろの漬けから食べてみると、甘いお醤油がほどよく染みていてとろける食感。漬醤油味のスープのしゃぶしゃぶで楽しんでいるような新しい感覚です。透明なスープは、まぐろのカブト(頭)を網焼きし、数種の香味野菜と煮込み、臭みを取って旨味やコクを引き出したもの。ワサビを溶かしたら、さらにすっきりした味わいになります。こんなにさっぱりいただけるラーメンがあるなんて。

まぐろラーメン誕生の裏には「元気だった頃の町を取り戻したい」と言う、味工房みその現会長・勘場 明さんの思いが。いちき串木野市は、日本でも指折りのまぐろ漁船船籍数を誇ります。かつては「まぐろの町」として栄えていたそうです。しかし、近年の漁船大型化や輸送コストの問題から、町での水揚げが減少し港からまぐろの姿が消え、まぐろの町としては寂しい現状を何とかしたいと思っていたところ、平成13年に地元商工会が「名物料理で串木野をもう一度まぐろの町にしよう。」と呼びかけ、開発をスタートしました。

最大の壁は、まぐろの魚臭さ。失敗を重ねた末に頭を焼く、と言う手法にたどり着き、今のスープが生まれたそう。そして麺や薬味にもこだわり抜き、これまでにない味の「串木野まぐろラーメン」が誕生。さらに勘場さんはレシピを公開し、他の飲食店と共栄会を作り地域全体にこの味を広げた、と言うことなんですが、ここがすごいところですよね。ご自分のお店だけではなく、地域全体が元気になってほしい、この思いが町を動かしたんだと思います。現在まで約20年、地元の方はもちろん、他地域からも多くの人が訪れ、いちき串木野市を代表する味になりました。私が訪れた日も平日にも関らず、広い店内は多くの人で賑わっていました。

◆昔ながらのラーメン屋 みその食堂
住所:鹿児島県いちき串木野市別府4285
電話:0996-33-6321
営業時間:平日 11:00~15:00(L.O.14:30)17:00~21:00(L.O.20:00)、土日祝日 11:00~21:00(L.O.20:00)

まとめ

40年の木の下で2ショット。頭の上にポメロポメロ、かわい~!

40年の木の下で2ショット。頭の上にポメロポメロ、かわい~!

サワーポメロもまぐろラーメンも、私にとっては目新しいものでしたが、関わり支える地元の皆さんにとっては、地域を代表し全国の人に知ってもらいたい自慢の逸品なんですよね。作っている方はもちろん、そこには多くの方が関わり“県内一の産地”やその土地の“名物”がある、と言うことに胸を打たれました。

と、まとめに入りましたが、地元愛溢れるいちき串木野市の方の案内はこちらで留まらず(笑)「いちご園と、他の市だけどカンパチもおいしいから食べて行って!」と、次々に案内して頂いたので、鹿児島の農業旅は、まだまだ続きま~す!お楽しみに。

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農業旅 川瀬良子

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川瀬良子

静岡県出身。NHK 『趣味の園芸 やさいの時間』司会を10年間務める。現在はラジオパーソナリティとしてTFM&JFN日本の農業を応援する番組『あぐりずむ』などで活躍中。2016年『川瀬良子のプランター野菜』(主婦と生活社)出版。 自身が農業好きになったように、一人でも多くの人に家庭菜園、農業に興味を持ってもらいたい!と、きっかけづくりになるようなモノ・コトを創り出している。

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