【今月の旅写真】常春の熱海へ フォトジェニックスポット&ご当地グルメを探して
マスク生活も緩和され、羽を伸ばしてお出かけを楽しめるようになりました。春らしく温かい日も増え、私も久しぶりに足を延ばして静岡県熱海市へ。まぶしい日差しを感じながら、フォトジェニックスポットとご当地グルメを探して散策してきました。
Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材: RICOH GRⅢ& GRⅢx
目次
熱海ってどんなところ?
年間を通して温暖な気候から「常春」といわれる熱海。静岡県の東端、伊豆半島の上部に位置し、東京から新幹線で約40分、名古屋からも約90分とアクセス抜群の温泉観光地で、日帰りでも1泊でも楽しめます。昭和時代に慰安旅行や新婚旅行のメッカとして栄えた熱海も、1990年代のバブル崩壊後には、さびれた温泉街のイメージが強まりました。しかし、2016年には駅舎がリニューアルし、ここ数年では、Iターン、Uターンの居住者も多く、物件をリノベーションした店舗も増えて活気ある温泉街に生まれ変わりました。
熱海駅から15分ほど歩けば、「熱海銀座商店街」もあり、昭和の雰囲気漂うレトロな喫茶店や、地魚を味わえるお店、お土産店なども立ち並ぶスポットも多数あります。私自身が4年前に訪れた時よりもさらに街に活気があふれていました。
アタミロープウェイで絶景パノラマを堪能
まずは市街地散策からスタート! 熱海のシンボルともいわれる「アタミロープウェイ」へ向かいました。熱海駅前のバスターミナル7番線「熱海港・後楽園」行きに乗車し、終点「後楽園」で下車した目の前にアタミロープウェイ乗り場があります。
アタミロープウェイは昭和33(1958)年の開業で65年の歴史があり、昭和レトロを感じる重厚感のあるゴンドラに揺られて、約3分間のショートトリップが楽しめます。
上昇していくゴンドラから見える熱海湾の景色に旅気分が高まり、山頂に達すると、熱海市街地や相模灘を望むパノラマが広がる展望台「あいじょう岬展望台」に到着です。展望台の先端に位置する「うみそらテラス」は、三方が断崖絶壁のスリル満点のロケーション。眼下に熱海湾、背後に連なる箱根連山から真鶴半島までぐるりと見渡すことができ、天気の良い日は、伊豆大島や三浦三崎、房総半島まで見えます。
撮影ポイント:水平線は必ず真っ直ぐに! 傾くと、画面全体のバランスが悪く感じられます。
デッキに隣接する「うみそらカフェ」では、各種ドリンクやソフトクリーム、アルコールの販売もあります。喧騒を忘れてテラスでひと息。気分爽快です! ここはぜひとも訪れていただきたいフォトジェニックスポットです。
撮影ポイント:人物や食べ物は、日陰で撮影すると柔らかいトーンで白トビせず撮影できます。うみそらテラスのフォトスポットは日陰になっているので、撮影しやすい状況が作られていますよ。
◆アタミロープウェイ
住所:静岡県熱海市和田浜南町8-15
運行時間:上り始発9:30・上り最終17:00/下り最終17:30
定休日:年中無休(強風等悪天日を除く)
大正・昭和の名邸「起雲閣」
アタミロープウェイ山麓駅から徒歩10分ほどで「起雲閣(きうんかく)」を訪れることができます。大正8(1919)年に建築された近代別荘建築で、元は実業家根津嘉一郎、海運王といわれ政財界で活躍した内田信也の別邸でした。平成12(2000)年より熱海市の所有となり文化と観光の拠点となっています。
敷地内は日本家屋の本館(和館)と離れ、中国、欧州などの装飾や様式を融合させた独特の雰囲気を持つ洋館と、一千坪の庭園で構成されています。特に洋館「玉姫」のサンルームの床には、アールデコのデザインを基調にした色鮮やかなタイルが、洋館「金剛」に併設されたローマ風浴室には、ステンドグラスの窓やテラコッタ製の湯出口などが、当時のまま残されています。
撮影ポイント:窓の外の景色がしっかりと見える明るさで露出を決めます。室内全体が明るすぎないことで趣を感じられる写真に。また、建築物は柱を基軸にし、斜めにならないように撮影します。
戦後は旅館として経営され、熱海を代表する宿として数多くの宿泊客を迎えた起雲閣には、尾崎紅葉、山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治、舟橋聖一、武田泰淳など、日本を代表する文豪たちが滞在しました。当時の資料とともに客室が公開されていて、彼らが筆を進めた様子を垣間見ることができます。
中庭は、池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)と呼ばれ、眺望を楽しむことと、散策を楽しむという両面をもった優雅な庭園です。実際に庭に入ることができ、四季折々の花とともに季節を感じながら散策を楽しめます。
◆起雲閣
住所:静岡県熱海市昭和町4-2
開園時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日:水曜日(祝・祭日は開館)、12月26日~12月30日
リゾート感あふれる「サンビーチ」
燦々と降り注ぐ陽光に、ヤシの並木道、鮮やかなブルーの海、マリーナに輝く白帆のヨット。南国リゾートに似た雰囲気をもつサンビーチは、熱海観光では外せない場所です。
サンビーチ隣接のムーンテラスやスカイデッキ、レインボーデッキを歩けば、リゾート気分を満喫できます。早朝には水平線から昇る朝日がビーチを染める美しい景色が見られ、夜は照明デザイナー・石井幹子氏が手がけた日本初のビーチのライトアップも行われています。冬も穏やかな気候である常春の熱海では、四季を通して花火大会も開催され、大勢の観光客でにぎわいを見せます。
◆サンビーチ
住所:静岡県熱海市東海岸町
ライトアップ時間:日没~22:00(花火打上時間は消灯)
人気ショップが立ち並ぶ「熱海銀座商店街」
熱海銀座商店街は、地元の人や観光で訪れた人たちから支持される人気店が軒を連ねます。熱海名物の干物店、絶大な人気を誇る絶品グルメやスイーツ専門店、地元で愛されているお店、歴史ある有名店もあり、どのお店もにぎわいを見せる繁盛店ばかり。行列は必須です。また、夕方になると商品が品切れということも少なくありません。2000年代には一時シャッター街と化した商店街とは思えないほど、活気にあふれています。
おしゃれなお店から老舗店まで各店の特徴が活かされた、多彩なお店のファザードを眺めて歩くだけでも楽しい商店街です。
撮影ポイント:坂道に建つ店舗ですが、画面が斜めにならないよう道路の反対側から真正面に正対して撮影をします。
また路地裏もフォトジェニック。熱海には、昭和の面影を色濃く残す路地がたくさんあるので見逃せません。私も撮影に夢中になってしまいました。
創業100年余の和菓子店「本家ときわぎ」
熱海銀座商店街の坂上に位置し、宮造りの店舗が一際目を引く「本家ときわぎ」さんは、大正時代に創業して以来100余年の歴史を誇る老舗和菓子店です。
初代から受け継がれる伝統製法と味を守り、無添加で丁寧につくられる和菓子は、熱海にゆかりのある文人たちにも愛されていたのだとか。ヘルシー志向の人にもうれしい、やさしい味わいの餅菓子「きびもち」を買い求めて伺ったところ、この日は直前に売り切れてしまったそう。 代わりに、小豆の質感がしっかりと感じられる、つぶし餡が特徴のもなか「常春のあたみ」をお土産に購入しました。食べやすい一口サイズで、これからの季節はアイスクリームを添えて一緒に楽しむのがよさそうです。
◆熱海 本家ときわぎ
住所:静岡県熱海市銀座町14-1
営業時間:9:30~17:30
定休日:水・木曜日(祝日・花火大会当日は営業)
食べ歩きグルメの代表格 山田屋の「いかめんち」
熱海銀座商店街から駅へ戻る急坂道(通称グルメ通り)を上る途中に、お魚のすり身の店「山田屋咲見町直売店」が現れます。道路のカーブを活かした間口の広い入りやすい店舗になっており、散策の途中や休憩に立ち寄る場所としておすすめです。
海の幸をふんだんに使った特産物の多い熱海では、食べ歩きも定番の楽しみ。山田屋さんでは、熱海らしく魅力ある地元商品のブランド 「A-PLUS」として認定された「いかめんち」や「しいたけ坊ちゃん丸」などの練り物や、熱海地ビールをご用意。店頭では揚げたてのかまぼこ「伊豆揚げ」が食べられることもあって盛況です。串に刺さった練り物をその場で揚げて提供してくれるうれしいサービスです。
アタミロープウェイで食べたソフトクリームに添えられていた「だいだいマーマレード」も販売していたので、お土産に購入しました。こちらは、エコファーマー認定の生産農家が添加物を一切使用せず手づくりしている商品です。
◆熱海お魚のすり身の店 山田屋咲見町直売店
住所:熱海市咲見町10-1
営業時間:9:00~17:00
定休日:元旦
旅の締めに「おさかな丼屋」で食べ比べ丼をいただく
実は、この日どうしても食べたかったのが桜えびです。桜えびの春漁は3月中旬〜6月初旬で、今がまさに旬。しかも、全国でも桜えびが水揚げされるのは静岡県駿河湾だけという100%のシェア率。これはちょっと特別です。また、しらすの旬の時期と重なるため、一緒に味わうことができます。駅まで向かう帰路、飲食店が次々と閉店時間を迎えるなかで、快く対応してくださったお店が「おさかな丼屋」さんです。熱海銀座商店街にある「おさかな食堂(おさかな酒場)」が手掛ける海鮮丼専門店で、女性にも入りやすいカジュアルなお店づくりをされていました。
お目当ての桜えび、しらす、まぐろが乗った「3種海鮮食べ比べ丼」をいただきました。紅白の彩りで、見た目にも気持ちが弾みます。ご飯とお魚を全て食べてしまわずに、1/3ほど残しておくと、特製の出汁をかけ、お茶漬けにしてくれるというサービスもあります。あごとマグロをふんだんに使い、コラーゲンとともにブレンドしたまろやかな濃い味に仕立てられた独自の出汁が加わることで、桜えびの食感が引き立ちました。これは他では味わえないおいしさです。
閉店間際にも関わらず食事をさせていただき、うれしい旅の終わりとなりました。
◆熱海駅前 おさかな丼屋
住所:静岡県熱海市田原本町3-7
営業時間:10:00~17:00(LO16:00)
定休日:年中無休
おわりに
首都圏からのアクセスも抜群で、人気のお店や観光スポットもたくさん。寂れた温泉街のイメージはどこへ? と思うほど、どの場所に行っても若者たちの姿を目にします。熱海の人気ぶり、混雑ぶり、熱気に圧倒され驚きました。次に訪れるときは宿泊して温泉もじっくりと楽しみ、朝夕の景色も堪能したいと思います。熱海はこれからも見逃せない観光地です。