"京は遠ても十八里" 若狭から京都へ、秋の鯖街道ドライブ旅
歴史やものづくりに触れる旅が大好きな、旅色LIKESライター・長月あきです。秋から冬にかけて旬を迎える鯖(さば)。おいしくて美容にも良いと言われる鯖は、この時期にたくさん食べておきたい味覚の一つです。鯖と言えば、福井から京都に続く「鯖街道」と呼ばれる道をご存じでしょうか。古来から、鯖をはじめとする海産物を福井県小浜(おばま)市から京都まで運搬していた道です。街道沿いには織田信長や徳川家康ゆかりの地を含む様々な史跡や、紅葉を楽しめるスポットがあり、歴史を感じる秋のドライブ旅にぴったりです。
目次
鯖街道とは
「鯖街道」とは、福井県南西部にある小浜から京都に行くために行商人たちが歩いた物流ルートのこと。街道の起点である小浜は、日本海に面する豊富な海産資源に恵まれた場所です。また、大阪から北海道を日本海回りで往来し物資の売買をしていた「北前船(きたまえぶね)」の寄港地でもあります。旧国名を若狭(わかさ)といい、古くから海で獲れる魚介類や塩、北前船が運んでくる北海道の海産物などを京都府に運び、京の都の食文化を支えてきました。
そんな小浜から京都をつなぐ鯖街道は、それぞれの地域を結んでいる複数のルートの総称です。ルートによって異なりますが、 80kmほどの距離の道を当時の人は早朝に出発し、翌朝まで歩き続けて京都に辿り着いたのだとか。鯖街道の中で最も往来が多かったとされるルートが「若狭街道」です。小浜を起点に、福井の熊川宿(くまがわじゅく)、滋賀の朽木(くつき)、京都の大原(おおはら)を通り、終点である京都の出町柳(でまちやなぎ)に続きます。今回はこの若狭街道をドライブ旅してきました。
鯖街道の起点・小浜で鯖街道の歴史を学ぶ(福井)
まずは鯖街道の起点である「小浜市鯖街道ミュージアム」へ。鯖街道の歴史やルートを学べます。小さな施設のため展示物は少なめですが、スタッフの方がとても親切に小浜の歴史や鯖街道について解説をしてくれます。
同じく、小浜市内にある「御食国(みけつくに)若狭おばま食文化館」も鯖街道について学べる施設です。古代から、朝廷に若狭の海の幸や塩を献上する御食国(みけつくに)の中心地であった若狭。若狭の食文化だけでなく、日本全国の食についても興味深い展示が多く、入場無料とは思えない充実した展示内容です。
◆小浜鯖街道ミュージアム
住所:福井県小浜市小浜広峰17番地の1
電話:0770-64-6034(小浜市文化観光課)
開館時間: 9:00~17:00
休館日:火曜日、12月29日から翌年1月3日
料金:無料
※駐車場がないので、近くの市営駐車場もしくは「人魚の浜東駐車場」の利用を推奨
◆御食国若狭おばま食文化館
住所:福井県小浜市川崎3丁目4番
電話: 0770-53-1000
開館時間:9:00~18:00(3月1日~10月31日)、9:00~17:00(11月1日~2月末日)
休館日:水曜日(祝日の場合は開館)、12月28日~1月5日
料金:無料
宿場町「熊川宿」を散策(福井)
小浜から車で20~30分程度走り、福井県と滋賀県の県境にある宿場町「熊川宿」へ。当時を偲ぶ伝統的な町並みを残すエリアです。端から端までは1kmほどの距離。かつては織田信長が豊臣秀吉や徳川家康を引き連れ朝倉義景討伐に向かった際にこの宿場町に一泊したとされます。
伝統的な町中には、元熊川村役場として建築された近代洋風建築のレトロな建物「若狭鯖街道熊川宿資料館(宿場館)」や、桜と紅葉の名所でもある松木神社、徳川家康が宿泊したとされる得法寺(とくほうじ)など、コンパクトながらも見どころがいくつもあります。また、近くには道の駅「若狭熊川宿」には鯖街道の歴史を紹介する「鯖街道ミュージアム」もあります。
◆若狭鯖街道熊川宿資料館 宿場館
住所:福井県三方上中郡若狭町熊川30-4-2
電話:0770-62-0330(宿場館)
営業時間:9:30~17:00 ※最終入館 16:30、12~3 月は16:00
入館料:高校生以上 200 円、中学生以下無料
休館日:月曜日(祝日の場合は翌水曜日)、年末年始
◆道の駅「若狭熊川宿」
住所:福井県三方上中郡若狭町熊川11-1-1
電話: 0770-62-9111
営業時間:売店 9:30~17:00(3~11月の平日)、9:00~18:00(3~11月の土・日・祝日)、9:30~17:00(12~2月)、食堂 10:30~16:00、鯖街道ミュージアム 9:30~17:00
定休日:3・6・9・12月の第 2 木曜日、12月29日~1月3日
織田信長の「朽木越え」で知られる朽木(滋賀)
熊川宿から車で20分程度走り、滋賀県高島市の朽木へ。織田信長は朝倉義景討伐の際、同盟関係にあった浅井長政の裏切りにより窮地に陥ります。「金ヶ崎の退き口」と呼ばれる撤退戦です。朽木は、信長が命がけで京へ撤退した「朽木越え」と呼ばれる撤退劇の舞台となった地でもあります。周辺には信長が身を隠していたといわれる岩も近くに残っているようです。広い駐車場のある「道の駅くつき新本陣」に車を停め、古い町並みが残る「朽木市場」というエリアを歩いてみることに。
朽木市場は、どことなく旧街道の風情が残る集落でした。
さらに数分車を走らせて、紅葉のスポットとして知られる曹洞宗の寺院「興聖寺(こうしょうじ)」へ。曹洞宗の大本山である永平寺(福井県)より 2年早く、日本における曹洞宗の開祖・道元禅師により創建されたお寺です。この場所にはかつて、室町幕府の12代将軍・足利義晴や13代将軍・義輝が戦乱の京を逃れ、滞在したといわれています。境内には、将軍を慰めるために作られた国指定の名勝「旧秀隣寺庭園(きゅうしゅうりじていえん・別名「足利庭園」)」が残っています。
◆道の駅「くつき新本陣」
住所:滋賀県高島市朽木市場 777
電話:0740-38-2398
◆興聖寺
住所:滋賀県高島市朽木岩瀬 374
電話:0740-38-2103
拝観料:300円
のどかな雰囲気の大原で、紅葉の美しい2つのお寺を訪問(京都)
朽木から走ること約40分で京都市左京区の北東部にある大原に到着。山々に囲まれ、田園風景の残る静かな山里には天台宗の寺院が点在しています。かつては、都を離れた貴人などがひっそりと暮らす地でもありました。また、平清盛の娘で安徳(あんとく)天皇の母である建礼門院徳子(けんれいもんいんとくこ)が平家滅亡後、余生を過ごした場所でもあります。大原では、美しい苔の庭園や紅葉でもよく知られる大原三千院(さんぜんいん)に立ち寄りました。静かなイメージのある大原ですが、京都市の中心部からそう遠くないためか、9月末に訪れた際は予想以上にインバウンド客で溢れかえっていました。
三千院から歩いて数分の場所にある「宝泉院(ほうせんいん)」には、鴨居と敷居、柱をフレームに見たてて庭を観賞できることで有名な「額縁庭園」があり、この名庭園をお抹茶とともに眺められます。 私が行った時期はまだ紅葉には早かったのですが、お座敷から眺める庭園の紅葉も美しいでしょうね。今年の11月3日~12月3日には4年ぶりに「秋の夜灯り」が開催されるそう。
◆大原三千院
住所:京都市左京区大原来迎院町540
電話番号:075-744-2531
拝観時間:9:00~17:00 ※11月は 8:30~17:00、12~2月は 9:00~16:30
拝観料:一般700円、中高生400円、小学生150円
休館日:無料
◆宝泉院
住所:京都市左京区大原勝林院町187番地
電話番号:075-744-2409
拝観時間:9:00~17:00 ※最終受付 16:30
拝観料(茶菓付):大人800円、中高生700円、小学生600円
※ライトアップなどイベント時はその都度異なる
◆宝泉院・秋の夜灯り(ライトアップ2023)
開催期間:11月3日(金)〜12月3日(日)
開門時間:17:45~
閉門時間:平日・土曜日 受付終了20:30~閉門21:00、日・祝日 受付終了20:00~閉門20:30
拝観料:一般800円、中高校生700円
ゴールはノスタルジックな風情の「出町桝形商店街」(京都)
鯖街道の終着地は、大原からさらに 30分ほど車で走った京都の出町柳にある「出町桝形商店街」。アーケード街の天井には、巨大な鯖のオブジェも。ノスタルジックな風情の商店街をぶらぶら歩くのも楽しいですね。
◆出町桝形商店
住所:京都市上京区桝形通出町西入二神町179
京は遠ても十八里
「京は遠ても十八里」という言葉があります。小浜から京都までは、遠いと言ってもせいぜい十八里(約72km)の距離(だから、たいしたことないさ!)、という意味です。重い荷を背負い、昼夜通して山道を歩くのは大変なこと。行商人が自らを鼓舞するための言葉なのでしょう。「十八里」の距離を体験できるドライブ旅でした。鯖街道には複数のルートがあります。今度は別のルートも訪ねてみたいところです。