【愛知】家康生誕の地・岡崎市で近代建築を巡る旅

愛知県

2024.04.02

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【愛知】家康生誕の地・岡崎市で近代建築を巡る旅

家康生誕の地として知られている、愛知県岡崎市。昨年放送された大河ドラマ「どうする家康」を見て、家康ゆかりのスポットを訪れた方もいらっしゃるのでは? ただ、岡崎市の見どころはそれだけではありません。城下町・宿場町として発展したこの町には、大正から昭和にかけて建てられた近代建築がいくつか残っています。昨年、旅色LIKESライター・長月あきが、岡崎のレトロな近代建築を巡る旅をしてきました。

目次

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旧本多忠次邸(1932年)

旧額田郡公会堂および物産陳列所(1913年)

日本福音ルーテル岡崎教会(1953年)

岡崎信用金庫資料館(1917年)

旧本宿村役場(1928年)

おわりに

旧本多忠次邸(1932年)

旧本多忠次邸(1932年)

まずは、東岡崎駅からバスで約20分のところにある「旧本田忠次邸」へ向かいます。家康の側近として仕えた徳川四天王のひとり、本多忠勝の子孫・本多忠次氏が、東京・世田谷区に建てた家を2012年に岡崎市に移築・復元した建物が「旧本田忠次邸」です。スパニッシュ様式を基調にした洋風建築で、岡崎市東公園の一角にあります。

旧本多忠次邸(1932年)

プライバシーを確保した現在の住宅様式の先駆けといえる内部

内装は、日本間と洋間を共存させた和洋折衷式。当時の家具や調度品が展示されています。

食堂にはステンドグラスの窓

食堂にはステンドグラスの窓

夫人室(和室)から一段下がったところにある日光室。和洋一帯の部屋で、写真の後ろに夫人室が広がる

夫人室(和室)から一段下がったところにある日光室。和洋一帯の部屋で、写真の後ろに夫人室が広がる

浴槽タイルや窓のステンドグラスがかわいいお風呂

浴槽タイルや窓のステンドグラスがかわいいお風呂

特徴は、各所にステンドグラスの装飾が施されていること。邸宅が建てられたころ、ステンドグラスは一般的なものではなかったため、住宅に用いるのはステータスだったそうです。本多忠次自身が周到な準備をして建築基本設計を行った邸宅は、外観デザインはもちろんのこと、間取りや装飾、調度品等、細部までこだわりが詰まっています。終戦後の一時期はGHQの接収(所有物を取り上げること)を受け、マッカーサーの顧問弁護士が住居としていたそうですが、返還後は1999年に103歳で亡くなるまで、本多忠次が住んでいました。それほど思い入れのあった邸宅なのですね。

◆旧本多忠次邸
住所:愛知県岡崎市欠町足延40-1
電話番号:0564-23-5015
開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替期間

旧額田郡公会堂および物産陳列所(1913年)

旧額田郡公会堂および物産陳列所(1913年)

“岡崎一のモダンな西洋館”であったといわれ、今も構造面では竣工当時の姿をほぼ保っている

こちらは、当時の額田(ぬかた)郡(現:岡崎市)の公会堂として、議事堂や各種会合の場として使用されていた「旧額田郡公会堂」。1969年からは郷土館として使われていましたが、耐震性の問題で2010年に閉鎖。現在は外観見学のみ可能です。

傷んでいるところも多数

傷んでいるところも多数

国登録有形文化財にも指定されているほど価値がある建物ですが、かなり老朽化していて、外観からは傷んでいるところもわかります。ピンクの外観や装飾が印象的でかわいらしいのに、このまま朽ちていくのはあまりにももったいない……。

物産陳列所

奥に見える水色の建物は「物産陳列所」。水色の外観がかわいい。ただ、立ち入り禁止なのか、ポールが立てられていたのでこれ以上近づかず、隙間から見るだけにしました。入ってもよかったのかな……? かわいらしい外観に目を奪われます。

◆旧額田郡公会堂および物産陳列所
住所:愛知県岡崎市朝日町3-36
※外観見学のみ

日本福音ルーテル岡崎教会(1953年)

日本福音ルーテル岡崎教会(1953年)

現役で使用されている教会ですが、この日は誰もいないようでした

愛知県には、英語教師でありながら建築家としても活躍したアメリカ人・ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏が設計した「ヴォーリズ建築」が2つありますが、そのうち1つが「日本福音ルーテル岡崎教会」です。白い外壁に赤っぽい色の屋根をした、こぢんまりとした見た目の教会。戦後の復興期に建てられたもので、国の登録有形文化財にも指定されています。

日本福音ルーテル岡崎教会

教会は、家康の祖父・松平清康の菩提を弔うために創建した「隨念寺」のすぐ近くにあります。太平洋戦争の空襲でこの辺り一帯も被災しましたが、偶然にも「隨念寺」は焼失を免れたそう。もともと訪れる予定はなかったものの、「家康ゆかりのお寺だから行ってみるといいよ」と、通りかかった近所の人に教えてもらいました。こちらは外観見学のみ可能です。

◆日本福音ルーテル岡崎教会
住所:愛知県岡崎市伝馬通4-54
※外観見学のみ

岡崎信用金庫資料館(1917年)

岡崎信用金庫資料館(1917年)

設計者の鈴木禎次氏は日本銀行本店など数多くの銀行建築を手がけた辰野金吾から学びを受けた

続いて向かうのは、日本福音ルーテル岡崎教会から徒歩約7分のところにある「岡崎信用金庫資料館」です。外観は内側から鉄筋コンクリートで補強され、第二次世界大戦の空襲で無くなった箱型屋根や煙突等は、当時の姿に復元されています。

岡崎信用金庫資料館

1階は美術や歴史などの展示を行うギャラリー、2階は貨幣展示室

この建物はかつて「旧岡崎銀行本店」として使われていましたが、現在、建物の内部は資料館になっています。私が訪れた時は、この建物を建築設計した鈴木禎次氏に関するパネルが展示されていました。名古屋を中心に100近い建築設計を手がけた方で、現存または復元されている建物が20棟ちょっとあるようです。

◆岡崎信用金庫資料館
住所:愛知県岡崎市伝馬通1-58
電話番号:0564-24-2367
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館料:無料

旧本宿村役場(1928年)

旧本宿村役場

「旧本宿村役場」外観

5本の柱をL字に並べ、束ねている

5本の柱をL字に並べ、束ねている

最後に紹介するのは、これまで紹介した建物からは少し離れた場所に位置する岡崎市の東部、本宿地区に建てられた「旧本宿村役場」。1955年まで役場庁舎として使われていたこの建物は、2008年に解体工事が行われました。その後、地域を象徴する近代化遺産であるということで解体部材を使用して復原工事に取り掛かり、2022年に竣工。18世紀のアメリカで流行したジョージアン様式という建築様式で、シンメトリーを基本としたデザインが特徴なのだとか。

パネル展示が行われている

パネル展示が行われている

復原された村長室

復原された村長室

中には、本宿の歴史や復原工事などが解説されたパネル展示がありました。

幾何学的なデザインが施された階段の親柱

幾何学的なデザインが施された階段の親柱

2階は広い会議スペース。議場などとして使用されていたのだとか

2階は広い会議スペース。議場などとして使用されていたのだとか

岡崎市に着いてから「旧本宿村役場」のことを知り急遽訪れたのですが、閉館時間にギリギリ間に合わず、16時過ぎに到着。仕方がないので外観だけでも見ようとウロウロしていると、中からスタッフの方が。遠方から来たことを伝えると、「せっかくなので中もどうぞ」と開けてくださいました。遠慮なく「すみません! ざっと見せてください」と上がると、「いいですよ。ボランティアさんがもう帰ったので説明はできないですが、どうぞごゆっくり」と、すでに消灯していた電気を再度つけてくれました。

さらに、入口に置いてあった資料をいただいていたところ、帰り際に「入口には置いてないですが、こんなパンフレットも残っているのでよかったらどうぞ」と、事務室の中から岡崎市の観光パンフレットを探して手渡してくれました。

旅の締めくくりはスタッフの方の親切な心遣いに触れて、温かい気持ちで帰路につきました。

◆旧本宿村役場
住所:愛知県岡崎市本宿町字一里山42番地9
電話番号:0564-23-6177(岡崎市教育委員会社会教育課)
開館時間:9:00~16:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

おわりに

家康にまつわるスポット以外にも、見どころがたくさんある愛知県岡崎市。空襲により多くの建物が焼失してしまった地域でもあるのですが、家康ゆかりの地巡りも楽しみつつ、レトロな名建築にぜひ触れてみてくださいね。

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#旅色LIKES #愛知県 #建築旅 #モデルコース #岡崎市 #近代建築

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歴史旅 長月あき

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長月あき

時間を見つけては、歴史や伝統工芸などに触れられる旅スポットを巡っています。ものづくりの技術や創意工夫を知る産業観光も大好き。東海・関西エリアを中心に、歴史やものづくりを身近に感じられる旅体験をお届けします。近年は道の駅とかわいいおみくじ、地サイダーがマイブーム。

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