いつまでも見ていたい、イサム・ノグチの美しくも温かい彫刻の世界
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こんにちは! むしむしと暑い日々が続いていますね。ひんやり涼しい美術館の温度が天国に感じるこの頃です^^
今回は半世紀にわたり彫刻や舞台美術、プロダクトデザインなどの創作活動で足跡を残してきたアーティストのイサム・ノグチ氏の展覧会に行ってきましたので、その様子をご紹介します。
イサム・ノグチ氏とは?
イサム・ノグチ氏は、ロサンゼルス出身の彫刻家です。彫刻家・ブランクーシの助手としてアーティストの活動を始めたノグチ氏。日本人の詩人・野口米次郎を父に、アメリカ人の作家兼教師であるレオニー・ギルモアを母に持つ彼は、アイデンティティの葛藤に苦しみながらも、独自の特色で創作を続けました。コスモポリタン(世界主義者)として生きたノグチ氏に影響を与えていたのが、父の祖国である日本の伝統であったといわれています。
さまざまな分野での活躍が目立ったにもかかわらず、ノグチ氏は一貫して自分が彫刻家でいることを貫いてきたそうです。晩年、アトリエを構えた香川県牟礼町(現在は高松市)で制作された石の彫刻の数々は、その意思を表す集大成といえるでしょう。
この展覧会は、「彫刻の宇宙」「かろみの世界」「石の庭」の3つのフロアに分かれ、彫刻と一体になった空間を楽しめる展示構成になっています。この後、作品の一部を紹介していきますので、ぜひお楽しみください♪
お出迎えとお見送りは和の心を感じられる優しい光
会場に入ると空間に広がる、まるで提灯のような柔らかい球体の明かりたち。岐阜提灯から発送を得たというこの作品は、30年以上に渡って取り組み続けられたそう。日本の伝統を感じる和紙の素材と、優しい光が心地いい作品です。近年中止されているお祭りを、懐かしく思い出しました。
そして最後にも、和紙で作られたさまざまな形をしたランプたちがお見送りしてくれます。この淡い光が、あたたかくて、とても好きでした。優しい気持ちで会場を後にすることができますよ。
じーっと見ているとさまざまな“発見”がある作品たち
「ヴォイド」とは、”すべてのものの存在する場所”という意味をもつ仏教用語だそう。このイメージに魅了されたノグチ氏は、1970年代以降、このタイトルの作品を続けて創作したそうです。少し左に傾いたオブジェはとてもなめらかなシェイプで佇み、柔らかなオーラが醸し出されていました。
周りに展示されたダークカラーの彫刻作品の中に、鮮やかで明るい赤の色が際立っていました。実際に見ると、写真で見る印象よりもけっこう大きな作品で、とても存在感があります。
この作品は子どもが遊ぶための彫刻遊具の一つです。今回展示されている作品は、この展示のために新しく作られたものだそう。独特のフォルムをした「プレイスカルプチュア」は全国各地の公園などに点在しているのですが、赤いものは日本初なんだとか。
実はノグチ氏は、生涯を通じて遊園地の建設プランを持っていたそうで、神奈川県横浜市の公園「こどもの国」には、彼の作品たちが並べられています。公園内の作品を見ると、彼の作品の一貫性をその色や形態からも感じることができますよ。
二つの石を重ねているように見えるこちらは、実はひとつの石を削り出して作った作品なんだそう。位置によって見え方が変わるのも特徴です。石の質感と量感を大切にしながら作られたようで、神秘的な美しさを放っています。自然の中にあっても違和感のない、緑や植物と相性の良さそうな作品という印象でした。
そして他の作品にはタイトルがある中、“無題”とした意味はなんなのでしょうか? 見る人の想像に託しているのかも知れません。私には何かの植物のように映りましたが、皆さんにはどのように見えますか?
ノグチ氏が亡くなる前に製作されたリスの作品。耳と尻尾の丸みがかわいらしいですね! すっきりとしたデザインで、クールなモダンさもありながら、愛らしい印象も感じられる、不思議な作品です。
おわりに
抽象的な作品が多いように見えましたが、皆さんにはどんな風に映りましたか? 一つの作品が違うものに見えたり、答えを知ってからその心を探したり……。作品を一つひとつじっくり見るのがすごく楽しい展覧会でした。彫刻展覧会はあまり行ったことがなく、難しいイメージが勝手にありましたが、初心者でも楽しめましたよ。暑い夏、アートは美術館はもちろんおうちでも楽しめるので、今まで知らなかった世界に触れてみるのもおすすめですよ。
◆イサム・ノグチ「発見の道」
会場:東京都美術館
期間:4/24〜8/29
休館日:月曜日※5月3日(月・祝)、7月26日(月)、8月2日(月)、8月9日(月・祝)は開室
開館時間:9:30~17:30
料金:一般1,900円、大学生・専門学生1,300円、65歳以上1,100円※日時指定予約推奨