日常を感じるまち、空知へ 味に“よりみち” #2
北海道のピノ・ノワールはここから広がりました

北海道の一大産地に成長 ワイン

ヨーロッパのブドウの産地とあまり緯度が変わらず、ブドウ栽培に適している北海道。
特に空知地方は高品質なブドウが育つと評判になり、
新しいワイナリーやヴィンヤード(ブドウ畑)が創業し、
ここ10年ほどの間に道内屈指のワイン産地に急成長しました。
その中で畑見学や直売所があるワイナリーを主にピックアップ。
北海道出身でワインにも造詣が深いEXILEのSHOKICHIさんに、
ワインを飲み比べてもらいました。

文/鷲頭文子(ワイルドベリー)

飲み手はこの人

EXILE SHOKICHI

北海道苫小牧市出身。ダンス&ボーカルグループEXILEのボーカル、パフォーマーとして活動。「LDH」史上最大のオーディション「iCON Z –Dreams For Children」のプロデューサーも務める。今年は、EXILEの5人からなるEXILE THE SECONDとしても全国ツアーを開催。2022年「ワインエキスパート」資格を取得。今年3月には「北海道ボールパークFビレッジ」内にオープンした、北海道和牛のファーストフード店「Yagien Ballpark」をプロデュース。

そらちワイン街道とは?

「街道」と言いながらも一部の道路などを指すのではなく、管内のワイナリーやヴィンヤード、空知ワインを卸しているレストラン、空知ワインを味わうイベントなど、ワインに関連する地域資源を「そらちワイン街道」と銘打っています。40軒近い加盟店がエリア広域で営業。ワイン街道を訪れることで、お店ではなかなか入手できない銘柄が購入できたり、レストランやホテルなどでも空知ワインと地元グルメのマリアージュが楽しめたりします。気候や環境に寄り添って丁寧に造られている空知ワインを飲めば、空知をもっと感じられそうです。

日本一小さなワイナリーから本格蒸溜所へ
施設には石狩平野を一望できるテラスを設けている
施設には石狩平野を一望できるテラスを設けている

winery01 馬追蒸溜所

2022年に「マオイ自由の丘ワイナリー」から社名、ブランド変更をして「馬追蒸溜所」に。ウイスキー造りで世界に知られるスコットランドのフォーサイス社からハイブリット式の蒸留機を導入し、ブランデーやウイスキーなどの生産も開始しました。ワイナリーとしては2006年に創業。0.5ヘクタールの畑で育てたヤマブドウ品種でワインを製造し、当時は「日本一小さなワイナリー」ともいわれていました。その後牧草地を開拓し、現在は約12ヘクタールに拡大した畑でテノワールにあったワイン造りを行っています。直営ショップを訪れるなら、見学ツアーのタイミングに合わせて行くのがおすすめです。

馬追蒸溜所 住所/夕張郡長沼町加賀団体
電話/0123-88-3704
営業時間/13:00~15:00(土曜・日曜・祝日のみ。施設見学は要予約)
見学ツアー1日2回(13:30~、14:30~)
ステージも備えるホールでは、ピアノライブや立食パーティーを開催することも
ステージも備えるホールでは、ピアノライブや
立食パーティーを開催することも
余市の契約農家で栽培されたツヴァイゲルレーベを100%使用した至極の一本
余市の契約農家で栽培された
ツヴァイゲルレーベを
100%使用した至極の一本
見学ツアーでは、蒸留機やワインタンクなどを作業場におりて解説してもらえる
見学ツアーでは、蒸留機やワインタンクなどを
作業場におりて解説してもらえる
MAOI ヒマラヤ&ヤマブドウ2021 (9,900円)
MAOI ヒマラヤ&ヤマブドウ2021 (9,900円)

自社畑で採れたヒマラヤとヤマブドウを使用。ヒマラヤはヒマラヤ山脈に自生するヤマブドウを起源とする品種で、ヒマラヤを使ったワイン造りをしているのは世界で唯一ここだけといわれています。ヤマブドウ系品種特有の重厚感が特徴。

造り手によって方向性が分かれやすい品種ですが、ヤマブドウの草木の香りをとても感じられて面白かったです。焼きそばなどソース味のものと相性がよさそう。

EXILE SHOKICHIさん
半世紀近い歴史をもつ 大規模ブドウ畑

winery02 鶴沼ワイナリー

日本では「棚つくり」栽培が主だが、こちらではヨーロッパと同じ「垣根式」を採用
日本では「棚つくり」栽培が主だが、こちらではヨーロッパと同じ「垣根式」を採用
ゲヴュルツトラミネールという品種は、国内では鶴沼ワイナリーで最も多く栽培されている
ゲヴュルツトラミネールという品種は、
国内では鶴沼ワイナリーで最も多く栽培されている
40名を超えるスタッフが40品種ほどを育てている
40名を超えるスタッフが40品種ほどを育てている

小樽市に本社を構える「北海道ワイン株式会社」の自社直轄農場で、総敷地面積447ヘクタールと日本で最も大きな畑を有する鶴沼ワイナリー。1974年の開園以来、ドイツやオーストリアで栽培されている品種を中心に、鶴沼に合う品種を厳選して栽培しています。鶴沼で栽培されたブドウで造られたワインの中から、特に厳しい品質基準をクリアしたものだけを選んで適正に熟成させてできあがるのが鶴沼シリーズ。国内外のさまざまなワインコンクールでたくさんの賞を受賞しています。また、2019年のG20大阪サミットでは「鶴沼ゲヴュルツトラミネール 2016」が提供ワインに選出されるなど、話題に事欠きません。

鶴沼ワイナリー 住所/樺戸郡浦臼町於札内428-17
電話/0125-68-2646
営業時間/夏季(4月中旬〜10月)9:00~16:00、冬季(11月〜4月中旬)9:00〜15:30(天候により直売店の営業を行わない場合があるため、要問い合わせ)
定休日/不定休
併設ショップでは鶴沼シリーズワインの購入も可能
併設ショップでは鶴沼シリーズワインの購入も可能
鶴沼収穫ツヴァイゲルト 2020 (2,750円)
鶴沼収穫ツヴァイゲルト 2020 (2,750円)

1975年以来鶴沼の自社畑にしっかり根付いたオーストリア生まれの赤ワイン品種、ツヴァイゲルトを100%使用した鶴沼ワイナリーのシグニチャー的銘柄。国産ワインコンクールで何度も入賞しているバランスのよいワインです。

骨格がしっかりとしていて強めにタンニンを感じられます。ピーマンたっぷりの青椒肉絲(チンジャオロース)などと合わせたいです。

EXILE SHOKICHIさん
ピノ・ノワールを北海道に広めた立役者
現在ではピノ・ノワール以外にも白ブドウ品種のシャルドネなど欧州系品種を中心に栽培
現在ではピノ・ノワール以外にも白ブドウ品種のシャルドネなど欧州系品種を中心に栽培

winery03 山﨑ワイナリー

家族でブドウの栽培から醸造、ボトリングまで行う小規模ドメーヌ。元は4代に渡り続いてきた農家で、20年ほど前からワイン造りを始めました。土地に合う品種を試行錯誤しながら、北海道ではほとんど栽培されていなかったピノ・ノワールを1998年に植え始めた立役者です。空知の地形や土壌、気候を配慮したブドウをつくり、空知の歴史や文化まで反映したワイン造りを意識して、地域に根ざしたワイナリーを目指しています。ワイナリーを訪れてほしいという思いから、生産されたワインの7割が直販。ネット販売などではなかなか手に入らない銘柄も多いので、ぜひワイナリー併設ショップへ。

山﨑ワイナリー 住所/三笠市達布791-22
電話/01267-4-4410
営業時間/10:00〜17:00(土曜・日曜・祝日のみ。畑見学は可)
設立当初から自社畑のブドウだけでワインを造っている
設立当初から自社畑のブドウだけで
ワインを造っている
PINOT NOIR(ピノ・ノワール)青 2021 (4,460円)
PINOT NOIR(ピノ・ノワール)青 2021 (4,460円)

山﨑ワイナリーの代表品種であるピノ・ノワールを使った赤ワイン。ピノ・ノワール使用ワインはふたつに大別されており、青ラベルのこちらはヴィンテージの特徴を活かした醸造で、主にシルト区のブドウが使用されています。

華やかな景色を見せてくれるワイン。軽やかにグイグイ飲んでもいいし、1人で夜の静けさと共にゆっくり向き合うのも最高です。焼き鳥と合わせたら素敵なマリアージュを見せてくれると思います。

EXILE SHOKICHIさん
日本のワイン造りの第一人者が独立創業
「生産者と一緒にワインを造る」との思いから、ワイナリー名に自身の名を入れたくなかったブルースさん。“とあるワイナリー”の語源から「10R」に
「生産者と一緒にワインを造る」との思いから、
ワイナリー名に自身の名を入れたくなかったブルースさん。
“とあるワイナリー”の語源から「10R」に

winery04 10R(トアール)ワイナリー(岩見沢市)

カリフォルニアで醸造コンサルタントに従事し、その後日本のワイナリーの醸造指導に招かれて来日したブルース・ガットラヴさんが奥様とともに独立して始めたのが10R。欧米では一般的な、ブドウ農家が育てたブドウを持ち込みそれぞれワインを造って自社のワインとして販売する「カスタムクラッシュワイナリー(受託醸造所)」形態ですが、自社でブドウの栽培やオリジナルワインの醸造も行っています。できるだけ人の手は入れないというモットーを体現した10Rのワインは、受託銘柄でもオリジナル銘柄でも、それぞれのブドウのポテンシャルが十分に引き出され風景が感じられるワインです。

10Rワイナリー 住所/岩見沢市栗沢町上幌1123-10
電話/0126-33-2770(直売所無し、畑見学は要予約。9〜11月は見学不可)
道内から多くのワイン生産者がブルースさんの元を訪れ、指導を受けている
道内から多くのワイン生産者が
ブルースさんの元を訪れ、指導を受けている
岩見沢の「KONDOヴィンヤード」で
栽培されているブドウの質のよさから
同じ市内への移住を決意
岩見沢の「KONDOヴィンヤード」で栽培されているブドウの質のよさから同じ市内への移住を決意
こことあるシリーズ シャルドネ 2021 (5,300円)
こことあるシリーズ シャルドネ 2021 (5,300円)

10Rワイナリーのブルースさんが取締役を兼任するココ・ファーム・ワイナリーとコラボした適地適品種のワイン。余市の木村農園、荒農園で栽培されたシャルドネを使用した辛口の白ワインです。

シャルドネでも酸や果実感に日本ならではの風味があるので、小高い丘で爽やかな風を浴びたような清涼感を感じられます。日本海の海鮮にも合う、オールマイティーな一本。

EXILE SHOKICHIさん